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院長の上嶋です。
開院後のドタバタで初回ブログから早速期間が空いてしまいました、申し訳ございません。
開院からあっという間に一ヶ月が過ぎていきました。
まだまだ新環境に慣れぬ部分もあり、お待たせしてしまったり、ご不便をおかけしてしまうことも多々ありますが、おかげさまでかかりつけの患者さんからも、新規で来院いただいた患者さんからも温かいお言葉をいただいており、スタッフ一同それを励みに頑張っております。更に皆さんの通いやすいクリニックを目指して参りますので、お気づきの点がございましたらお気軽にスタッフにお話し下さい。
さて、開院から僅か一ヶ月ですが、患者さんから数多くご質問いただく事がございます。
新型コロナウイルスワクチンについてです。
今回はこれについて少しお話ししようと思います。
「わたしはいつ頃打てるの?」「わたしは打った方がいいの?」「アレルギー(アナフィラキシー)や副作用が心配!」「効果はどれくらいあるの?」等々、ご質問いただきます。
コロナ禍の闇に光を差し込む期待のワクチンだけに、皆さんの関心も非常に大きいですが、日々の報道だけでこのワクチンを正確に理解することはなかなか難しいですよね。
今回はそんな新型コロナウイルスワクチンについて少し書きたいと思います。
そもそも感染症に対するワクチンの歴史は非常に長いですが、今回の新型コロナウイルスワクチンの開発スピードは過去に例のないスピードで進みました(進んでいます)。
これはもちろんワクチン研究者のたゆまぬ努力の賜物である事は言うまでもないことですが、このスピード感が逆に「そんなに急いで作ったワクチンが本当に安全なの?」と、これから接種を控える皆さんの心配の種にもなっていることとお察しします。
通常のワクチン開発には数年、十数年かかるとされています。①ワクチンの作成、②第1~3相試験による安全性・有効性の確認、③認可取得というプロセスを辿る必要があるため、どうしても数年レベルの時間を要するわけです。
では、今回のワクチンがどうやってこんなに早く開発を進める事ができたのかというと、これは通常1相ずつ順に行う試験を、今回は各相の試験をオーバーラップさせ並行して行う事で試験に費やす時間を大幅に短縮させたことによります。ですので、開発スピードが速かったからといって、試験を省略したりして他のワクチンよりも手を抜いて作られたというものでは決してありません。まずはこのことがとても重要です。
ですので、他のワクチン同様、惜しみなく医学が結集して作られたワクチンであるとご安心いただいて良いのですが、報道ではワクチン接種後に生じた副作用について取り上げられる事が多いためか、ややもするとこのワクチンが他のワクチンと比較してすごく副作用の多い、危険を伴う薬だと誤解をしてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はそんなことはありません。
実際に発表されたデータを紐解いてみると、確かにワクチン接種部の局所的な痛みは7~8割の人が、だるさや頭痛は5~6割の人が自覚するとされています。しかし一方でニュースなどで話題になる重大な副作用であるアナフィラキシーに関しては、決して他の薬剤と比べて発生率が高いということはありません。
今回、日本で最初に承認され使用されているファイザー社製ワクチンでは100万人あたりのアナフィラキシー発生率は5.0とされています。アナフィラキシーが発生する確率は100万人に5人の割合ということです。
この数字、我々に最も身近なワクチンであるインフルエンザワクチンは1.4とされていますので確かにインフルエンザワクチンよりは若干アナフィラキシー発生率は高い事になります。ですが他の薬剤と比べてみると、最も古くから使用されている抗生物質であるペニシリンはなんと4590!その他にも日常的に使用される一般的な抗生物質でも370~610、頭痛の際などにも使われ最近では薬局でも購入できるロキソプロフェンなどの鎮痛薬ではその発生率は1300とされていますので、皆さんが日常的に服用する機会のある一般的な薬の方が圧倒的にアナフィラキシーを起こす頻度が高く、新型コロナウイルスワクチンは薬の中ではアナフィラキシー発生頻度の低い、安全性の高い薬であると言えます。
さらに加えると、今回のワクチンの成分の内、アナフィラキシーを引き起こす原因として考えられているのはポリエチエングリコールとポリソルベートという2つの成分ですが、実はこれ、一般的に処方される下剤や、薬局で購入できる点鼻薬(パ●ロン点鼻薬)や軟膏(オロ●イン軟膏)、その他身近な食品や化粧品などにも使用されている成分ですので、決して珍しいものではなく、多くの方が一度は摂取したことがあるものです。
とはいえ、少ないながらアナフィラキシーは生じうる事も事実です。対策を怠って良いものでは決してありません。万が一にもアナフィラキシーが生じてしまった際に適切に対応することが当院を含めワクチン接種を担う医療機関の勤めです。アナフィラキシーの発生時期は一般的に原因薬剤投与後15分以内までが70%、30分以内までで90%とされています。そしてアナフィラキシーを起こす人の約8割が過去に薬剤でアレルギーを起こした既往がある方と言われていますので、当院ではワクチン接種前のアレルギー問診をより丁寧に行い、接種後15~30分を目安に院内待機していただいて体調の変化がないことを観察するなど、万全の接種体制を整えてこれから始まる一般接種に臨もうと考えております。
さて、新型コロナウイルスワクチンについて、今回は一番よく質問されるその安全性についてお話しいたしました。この記事を読んでいただき、比較的安全性の高いワクチンである事をご理解いただき、間近に控えるワクチン接種に対する不安を少しでも払拭することができれば幸いです。
ただし、一方で時間をかけないと絶対にわからない事が今回のワクチンに残っていることも事実で、それが、①ワクチンの長期的効果(効果持続期間)と、②遅発性の有害事象です。これに関しては時間が教えてくれることですので確かにこの点だけは現時点でのこのワクチンに残された課題と言えるでしょう。
異例の事態に異例の早さで開発されたワクチンですので、不安に思うことが多々ある事は皆同じだと思います。ですがこの新型コロナウイルス感染症の大流行が収束を迎えるためには最低でも60~70%の人々がこのウイルスに対する免疫を獲得することが必要とされています。
仮にもしも誰もワクチンを接種せず、このウイルスに罹患することで得られる免疫のみで日本国民の70%の免疫獲得を達成するとなれば、この日本で8820万人がこのウイルスに感染しなくてはならない計算になります。本邦における新型コロナウイルス感染症の死亡率が1.4%ですから、収束までに約123万人もの尊い命を失わなければならない計算です。
あまりにも大きな代償ではないでしょうか。
ワクチンの接種は決して強要はされませんし、しませんが、皆がこのウイルスに対する免疫を獲得することがいかに重要な事であるかがわかっていただけるかと思います。
自分を守るだけでなく、周囲の大切な人も守ることに繋がりますので、それぞれが良く考えてワクチン接種について御判断いただければと思います。
長くなりましたが、今回はこのあたりにしておこうと思います。
新型コロナウイルスワクチンについては今後も随時、最新情報をアップしていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
不明な点がございましたら、受診の際にお気軽におたずね下さい。